これも何かの縁

ピアノとマンガの道を歩んできたハヤシのエッセイ・イラスト・物語集

マンガにおけるブスの存在☆『ドラえもん』・『タッチ』

11月24日追記。

こんな漫画もあったんだな。

少年マガジンベクターボール』――実在する女性スポーツ選手・歌手を利用し哂いものにしたギャグ漫画。

 

10月30日追記。

ジャイ子』の対極にいる『しずかちゃん』

ジャイ子は漫画家を目指していたけど、しずかちゃんが何をやっていたかまるで印象になかったが、そうか……ヴァイオリンをやっていたんだっけ。

 

追記・訂正

ドラえもんの『ジャイ子』について、以下の指摘を受けたので、その内容を記します。

ドラえもんの第1話「未来の国からはるばると」では、ジャイ子は悲惨な目にあったのび太を笑ったり、羽つきで負けたのび太の顔を真っ黒に塗るような、意地の悪い女の子として描かれています。
また、初期エピソードの一つである「愛妻ジャイ子!?」でもやはりジャイ子のび太の悪口を言ったりするのですが、ひょんなことからのび太に尊敬の念を抱き、のび太の方もまんざらでもなさそうな態度を見せるという展開になるんですよ!
”漫画家志望の努力家”というよく知られるジャイ子像は後年に設定されたもので、ジャイ子は初期と後期で大きく設定が変わったキャラです。
アニメに関しては見ていないので何とも言えないのですが、少なくとも原作漫画においては「のび太はブスだからジャイ子を猛烈に嫌っている」とは言い切れない部分があると思います。
ついでに言うと後期ジャイ子にはのび太とは別のボーイフレンド(めちゃくちゃ女子にモテる男子という設定)ができてたりします。

というわけで、ジャイ子の性格は初期と後期で違うようで、意地悪な性格だったようです。以下に書かれている本文『のび太はブスというだけでジャイ子を嫌った』という部分を訂正します。申し訳ありませんでした。なお、本文はそのままにしておきます。

 

本文

今まで当ブログの記事でも『ブスについて描かれた小説作品』を紹介してきたが、その中のブスキャラの結末はとても辛辣で、容赦なかった。

――ブスはギャグ。嫌われて当然の存在。哂われる存在。

それは子どもを対象とする漫画にもある。そう、ドラえもんに登場するジャイ子だ。

以下、漫画におけるブスキャラについて語る。

目次

のび太に嫌がられるドラえもんジャイ子

ドラえもんが登場する時、のび太の未来は『ジャイ子と結婚する』ということになっており、のび太が強烈に嫌がるシーンがある。その『悲惨な未来』を変えるために、ドラえもんのび太の手助けをする、というのが始まりだ。

さて、ジャイ子はブスではあるが、別に性格は意地悪でもないし、人間性に難があるわけでもない。
意地悪なのはジャイアンスネ夫であり、ジャイ子の性格が悪いという描写はなかったように思う。

けれど、のび太は猛烈にジャイ子を嫌がる。

それはデブスだから。
その一点だろう。

もち、結婚した場合、義兄がジャイアンになるから、というのもあるかもしれないが。それでも、もしジャイ子が美人だったら、義兄がジャイアンでも、あれほどに嫌がらないのでは。
というかジャイ子が美人だと、のび太ジャイ子を嫌がる理由がいまひとつ、読者である子どもたちに伝わらないからだろう。

で、ドラえもんの助けにより、のび太の将来は『美人なしずかちゃんと結婚する』という方向へ修正される。

ドラえもん』のような子どもの漫画からして、ブスはダメな人間であり、ブスとの結婚は不幸であり、結婚するなら美人でいけ、美人は良し、美人との結婚は幸せ、という価値観で物語は進むのだ。

いや、漫画だけではなく、幼児の読む童話からして、そんな感じだよね^^;
(今は違ってきているのかしら?)

読者は、のび太がブスなジャイ子との結婚を嫌がるシーンを『それは当然だ』と、ごく自然に受け止める。
のび太は女の子を外見だけで判断している、と批判的に見たりはしない。

原作を全部知っているわけではないけれど、ブスというその一点だけでジャイ子のび太からも嫌われるキャラであり、読者の哂いを誘うギャグキャラなのだ。

そういえば――聞いた話では、藤子不二雄氏はジャイ子の本名を表にしていないという。ジャイアンは本名があるのに。
それは藤子先生が「もしジャイ子の本名を表にしたら、その名前の女の子が虐められるのでは」と危惧したからなんだとか。
※ならば『のび太』や『スネ夫』みたいに、ありえない名前にすればいいのに。というかジャイアンは普通に『タケシ』なんだよなあ。何でだろ……。

まあ、とにかく――もうずっと昔から「ジャイ子みたいなブスは嫌われ、哂われても仕方ない」という空気があったわけで、今よりも酷かったかもしれない。昔はセクハラという概念もなかったしね。

ただ――ジャイ子は漫画家を目指しており、けっこう根性もあり、己の欠点も反省したりもし、人間としてはできている描写があるんだとか。

そう、ジャイ子はブスだけど、人間としてダメではないのだ。
むしろ『人間としてなかなか成長しない、ドラえもんに頼りっぱなしののび太』のほうが、ジャイ子より下かも……。

けれど、そんなのび太からジャイ子は猛烈に嫌われている。ブスというその一点で。

ブスと結婚したら負け。そんな未来は暗黒。惨め。不幸。
そんな価値観が子どもの時から刷り込まれるのだ。

なので、多くの男性が美人を求め、ブスを毛嫌いするのは当然なのかもしれない。

のび太でさえしずかちゃんと結婚できたのだ。美人をモノにしろ。ブスと結婚するくらいならしないほうがいい……なんてね。
ブスとの結婚こそ負け。避けるべきこと。漫画『ドラえもん』でさえ、そういう価値観を持っているのである^^;

『タッチ』に登場するデブスマネージャー

さて、もうひとつ――ブスキャラで印象に残っている作品がある。あだち充氏の『タッチ』だ。 

 主人公・上杉達也をライバル視している西村勇というキャラがいるのだが――
そんな西村君の幼馴染・デブスの女子マネージャーが登場する。

が、こちらのデブス女子キャラは、おどおどしていて、自信なさげである。

なので『タッチ』では読者に向けて、このマネージャーを哂い者にするという描写はなかったように記憶している。

で、劇中、男子生徒らがこの女子マネージャーをからかい哂うシーンがあるのだが、西村は怒り、その男子生徒らをボコボコに殴る。

まあ、西村君のこの幼馴染マネージャーに対する『威張る態度』はあまり好きではないが、このシーンで西村は株を上げたと思う。読者もここで「西村、いい奴じゃん」と見直したことだろう。

『タッチ』の作者・あだち充氏は、ブスキャラを登場させたが『哂いもの』にはしなかった。

※ただし、ずっと前のほうの話で南ちゃんが達也に殴られた後、達也を取り巻く男子生徒らが「南ちゃんを殴るなんて、ブスならともかく」と言ったりしている……。「美人を殴るのは許せないが、ブスなら殴って良し」と言っているようで、この時は「すげえブス差別だな」と思ったが^^;

そう、物語上、ブスキャラを哂いものにする場合、そのブスキャラの性格はなぜか積極的で堂々としていて、自分がブスだと自覚していない自信家である。

まあ、弱弱しいブスを哂うと、ただの『いじめ』になってしまうからな。さすがにそれをやるのは後味悪いのだろう。

ただ、裏を返せば「ブスはおとなしく引っ込んでいろ、お前の価値はゼロだ。自信を持つなど論外、分をわきまえろ」ということなのかもしれない。
じゃなければ「哂いものにするぞ」「いじめてやるぞ」と。

前にも話題にしたけど――
小説・椰月美智子氏の『恋愛小説』でも、なぜか男性にも積極的で自信家のオタクなデブスをこれでもかというくらい哂いものにし、悪しざまな描写がされていた。

そう、「ブスなのに、恋愛に積極的なんて許せない」「私のカッコイイ彼氏とエッチしたなんて、おぞましい」「ブスはブサメンとやっていろ」――これが美人主人公の本音だ。(おそらく椰月美智子氏の本音でもあるのだろう)
そして読者も無意識にそれに同調する。だから、美人主人公がデブスキャラを気持ち悪がり、悪しざまに思う様に対し、読者は反感を覚えない。

※『恋愛小説』の書評はこちらの記事にて。

↓つまり、世間の本音はこうである。

のび太のくせに生意気だぞ。
ブスのくせに生意気だぞ。
オタクのくせに生意気だぞ。
非モテのくせに生意気だぞ。

……イジメが蔓延する人間社会の中では、おとなしく自信なさげに引っ込んでいるに限りますね。