これも何かの縁

ピアノとマンガの道を歩んできたハヤシのエッセイ・イラスト・物語集

聖夜―ああ人権! 言論の自由VS女性の権利

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短編連作物語「これも何かの縁」本編スタート。

 

出会いは運=縁。

本編・第一編目の舞台は12月から始まり、日本文化・風習も紹介しながら、四季を巡っていきます。(基本はほのぼの、たまにシリアス、ダークな話もあり)
今回は、四条静也と理沙の若夫婦のことを紹介しながら、彼らが過ごす聖夜を物語ります。

では以下、物語本文。(2017年の聖夜は日曜日ですが、劇中は平日ということで)

    ・・・・・・・・・・

 凍りつくような真冬の夜。冷たい風が吹きつけるものの、行き交う人々の表情は明るい。白い息を弾ませる口は笑みを伴っている。そう、今夜はクリスマス・イブ。厳寒の街は色とりどりの光が躍り、楽しげな空気に満ちていた。

 ここ○○市役所も午後7時を過ぎると残業している職員はごくわずかとなり、四条静也(シジョウセイヤ)のいる総務部広報課もガランとしており、静也を含めて二人しかいなかった。

「これでよし……と」

 ようやく仕事を終えた静也はパソコンを終了し、帰り支度を始める。さっき確認したら、生活部市民課にいる妻の理沙から「仕事が終わった」とメッセが届いていた。急がねば。

「お先に失礼します」

 残業組一人となってしまった職員の丸まった広い背中にあいさつすると、その背中が起き上がる。

「静也(セイヤ)、聖夜は理沙ちゃんと性夜だな」

 背中の主・黒野先輩がパソコンから目を離し、濃ゆい顔にイヤラしそうな笑みを貼り付かせ、声をかけてきた。

 静也は何を言われているのか分からず、首を傾げる。
 ――セイヤ、セイヤはリサちゃんとセイヤだな、ってどういうことだ?

 しばし考え込んだが、当てはまりそうな漢字に変換してみて、ようやく意味が分かった。
 ――下品な先輩らしい、いつにもましてしょーもないダジャレだよなあ……。

 この下らないオヤジギャグを飛ばした黒野先輩は、男性ホルモンが過剰に分泌されているのでは、と思ってしまうほど見た目も性格もマッチョな大男だ。

 男性ホルモンに体中を支配されている先輩は、さぞかしあっちのほうも盛んなのだろう……と思ったところでハッとする。

 ――おっと、オレとしたことが『あっちも盛ん』なんて下品なことを……

 首を微かに横に振る静也をよそに、黒野の言葉は続く。

「いいよな。まだ新婚気分で夫婦ラブラブか? オレなんて職場の女の子たちから『敵』扱いされているっていうのによ」

 この黒野先輩は『セクハラ男』として、この課だけではなく役所全体にその名を轟かせていた。
 ここ○○市役所の職員で黒野を知らぬ者などいない。

 静也は生温かい目を向け、広報課室にたった一人となった先輩に頭を下げる。
「じゃ、お先に」

「性なる夜を」
 黒野はわざわざ席から立ち上がり、腰を前後に振って見送ってくれた。真冬の中にあっても、黒野の周囲だけは常にムンムンとした真夏だ。

 そんな黒野が振りまくマッチョオーラから逃げるように早足に部屋を出て、妻と待ち合わせている職員通用口へ向かう。エレベータを降り、薄暗いフロアを抜けると、見慣れた人影が待っていた。 

「お待たせ」
 静也が駆け寄ると、妻の理沙は口許をゆるめ頷いた。
「じゃ、行こうか」
 二人は守衛に会釈をしながら通用口を抜け、寒空の下に出る。

 ――四条静也と理沙は共に21歳。
 二人ともこの地区にある児童養護施設の出身であり、中学も高校も同じで、中学時代は一緒のクラスだった。

 ちなみに静也が施設に入所したのは8歳、理沙は14歳の時だ。静也も理沙も一人っ子、両親を失い、祖父母も早くに病気で亡くなっていて、養育してくれる親族がほかにいなかった。

 静也のほうには母方父方それぞれ伯父や叔母がいたが、経済的な理由で養育拒否され、そのまま疎遠になっている。

 理沙も同じく天涯孤独状態だった。遠い親戚はいたかもしれないが、会ったことすらなく交流もなかった。

 児童養護施設では、親の病気や離婚で家庭での養育が困難になって預かる場合が多かったが、虐待や育児放棄で保護される子も少なくない。

 日本全国の児童養護施設入所者のうち、孤児は1割にも満たないという。

 二人が入所した施設でも、両親がいなかったのは静也と理沙だけで、ほかの子は両親か片親が存命していた。

 似た境遇の静也と理沙がくっつくのは時間の問題だった。これを縁というのだろう。やがて、二人で将来の計画を立てるまでの仲となった。

 18歳になれば施設を出て、自力で生活していかなければならない。そこで静也は『安定的な職業に就くこと』を最終目標とし、この区域にある偏差値トップの公立高校を狙うことにした。

 理沙も静也と一緒に受験勉強に励み、平日は学校の図書室、休日は市立図書館で時を過ごした。施設からもらえるお小遣いは将来のために貯金しておきたかった二人にとって、お金のかからない図書館はありがたいデート場所でもあった。

 そして無事、志望する高校に入ることができ――
 次に二人が目指したのは地方公務員試験に合格することだった。

 確実に採用してもらうために、筆記試験で上位をとることを目標とし、面接の対策を練った。高校生活はその勉強にまるまる費やされた。

 公務員試験は競争率が高かったが、勉強の甲斐あって筆記試験を通過し、面接では養護施設暮らしであったことを最大限活かして面接官の同情を誘い――

「自分たちはこの地域に育てていただいた。その恩返しをしたい。地域のために尽くしたい」
「苦労を乗り越えた自分たちは自立心が強く有能な人間だ」

 というようなことを鼻持ちならないようアピールし、クリアー。二人とも難関の一般行政職で合格し、いわゆる『事務屋』として同じ役所に勤めることとなった。

 こうして静也と理沙は安定を手に入れ、今は平凡ながら幸せに暮らせている。
 倹しい生活をし――例えば、連絡の取り合いはケータイで事足りるのでスマフォも持たず、今時の若者の流行に背を向けたまま――節約志向の暮らしを続けた甲斐があって貯金もそこそこできた。公務員なので保障も万全。

 そこで静也は「そろそろ子どもを」と考え始めていた。

 けど理沙は「まだ夫婦二人っきりの生活を楽しみたい」と言う。

 たしかに21歳で……いや、今から励めば子どもが生まれる頃には22歳になるが――この若さで子を持つというのは、今の時代では早いほうだろう。
 しかし生物的には――

卵子って老化していくから、女はできるだけ若い時に子どもをつくったほうがいいんだぞ」

 静也は歩きながら、論理的かつ科学的に説得を試みようと、この話題を振ってみた。が――

「それって女性蔑視!」
 理沙は立ち止まり、口を尖らせた。

「テレビに出ていた産婦人科医がそう言っていたんだっ。20代前半が理想だって」

 慌てて反論する静也に、理沙は聞く耳持たず、まくし立てる。

「女を子どもを産む機械だとでも思っているわけ? 老化? 20代後半からはババアだって言うの? 女だけ年齢差別する気?……あの黒野先輩以上のセクハラ発言だよ」

「オレは科学的見地から『卵子の老化』という事実を述べただけだ」

 せっかくの聖夜に夫婦喧嘩なんてしたくない。
 が、静也の諭しに理沙は鼻を鳴らす。

「じゃあ、それと同じこと、職場の女性たちに言ってみたら。黒野先輩以上の『女の敵』に認定されるかも」
「……」

「うん、きっと非難が吹き荒れるだろうけど、言えたら、その勇気を讃えて、子どものこと考え直してもいいよ」
「……」

 そうきたか、ならば……と静也は黙り込み、本気で思案する。

 ――これを職場の女性たちに言って、誤解なく伝わるだろうか?

 いや、皆、理沙と同じ反応を示すような気がする……。この頃の女は何かと好戦的だ。特にうちの職場は女性の権利にうるさい。理沙もその空気に感化されているのだろう。

 ひとたび『女の敵』のレッテルを貼られたら、黒野先輩と同種扱いとなる。
 そんなリスクをとってまで、オレは子どもが欲しいのか?

 静也は、自ら『女の敵』となり、黒野先輩の仲間になる勇気がいまひとつ持てなかった。
 が、ふと理沙を見やると、何だか勝ち誇った顔をしている。
 ちょっと悔しい……。

 静也はさらに考え込む。
 ――オレは間違ったことを言っていない。卵子の老化は生物としての厳正なる事実だ。
 なのになぜそれを言うと女性蔑視となるのか?
 それを女性蔑視と捉えるほうが間違っているんじゃないのか?

 そうだ、事実を言って、それを蔑視だと攻撃するほうに問題がある。正しいことを言った者が悪者扱いされるなんて理不尽だ。
 これこそ人権侵害。

 それにテレビで卵子の老化を指摘し、若いうちに出産することをお勧めすると発言した産婦人科医はなぜ叩かれなかったんだ?

 ……そういえば、その産婦人科医は女性だったっけ。
 って、女が言うのはいいけど、男が言ったらけしからん、となるのは男に対する差別だ! 

「よし、子どもが欲しいのはもちろんだけど、男の権利を守るためにも女性らと戦ってみるか」

 静也は覚悟を決めた。真の男女平等を目指すのも悪くはない。これは自分の利益にもなる。

「え、何でそうなるの。早く子どもを産めって言う静也のほうがセクハラしているんだよ?」

 怪訝な顔をする理沙に、静也は理屈で通す。

「いや、その考えこそオレへの、ひいては男への人権侵害だ」
「ええ?」

「事実を言った者を悪に貶め、言論を封じることこそ問題だ。言論の自由憲法で保障されている。要するに憲法違反を犯していることになる」
「……話、大きくなってない?」

「いや、女性の人権が大事ならば、言論の自由も大事、そして男の人権も大事だ。女の人権だけ優先されるというのは男への差別だ。オレの言ってること、間違ってないよな?」
「ま、たしかに……」

 いつの間にか形勢逆転。
 こういう話になると、たいてい理沙のほうが分が悪くなる。

「理沙は、オレの人権が侵害されて平気なのか?」
「平気じゃないけど……」

「じゃ、オレと一緒に戦ってくれるよな」
「ん……」

 ――あれ? 誰と戦うの? 職場の女性たちと? 何で私が?
 理沙は混乱してきた。だいたい職場の人間は何となく苦手だ。当たらず障らずでいきたい。

「……まずは憲法最高法規であることを理解してもらうのが先だな」
 静也は腕を組み、独りごちていた。

「ええ~と、とにかく帰らない? お腹も空いたし」

 ――っていうか、だいたいクリスマスに『人権』とか『言論の自由』とか『憲法』とか、何でそんな話題で頭を一杯にしなきゃいけないわけ?

 ため息吐きつつも、理沙は静也の腕を取り、歩き始める。
 静也はすっかり思考の世界に入り込んでしまい、理沙に引っ張られるままだ。

 その時――
「あれ、お前ら、まだいたのか」

 背中から聞こえた声に、理沙は振り返る。

「もしや、オレを待っていてくれたのか」

 聖夜は独りなのかもしれない黒野先輩が男性ホルモンオーラをムンムンと振り撒きながら嬉しそうに近づいてきた。心なしか、冷たい風が熱風に変わった気がする。

「いいえ、ちょっと二人で議論していたものですから」

 理沙は慌てて答えた。役所の通用口から数歩のところで、自分たちはしょーもない話で時間を食っていたようだ。黒野先輩には悪いけど、早く家に帰って、静也と二人っきりで過ごしたい。

「議論?」
「人権について……いえ、何だか、そういう展開になっちゃったというか……」

 理沙はショートボブの頭に手をやった。
 静也のほうは黒野に目をやることもなく、依然として思考の世界に入ったままだ。

「理沙ちん、静也みたいな男と生活していて、疲れないか?」
「そりゃあ~疲れますよ。慣れましたが」

 嘆息混じりに応える理沙へ、黒野は慰めるようにこう囁いた。

「ま……とりあえず、性夜を楽しめよ」
「はい、そうします」

 もちろん理沙は「聖夜を楽しめよ」と捉えていたのだが、そんなの知ったこっちゃない黒野は静也に耳打ちする。

「理沙ちん、お前との性なる夜を楽しみたいってよ。頭ばかり硬くしてないで、あそこもなっ……ちゃんと楽しませてやれよ」

 静也が我に返った時、黒野は腰を振り振り遠ざかり、賑わう街並みの中に消えて行った。

「下品でも、あっけらかんとしているから、なんか憎めないんだよな」

 黒野が振りまいていった真夏の残滓の中で独りごちる静也に、理沙も頷く。

「許せちゃうというか……得な性格だよね」

 とその時、突然、静也はひらめいた。
 頭の中では電飾が一斉に燈り、シャンシャンシャンと鈴の音が威勢よく響く。

 ――セクハラに受け取られそうなことも、あっけらかんと明るくカラッと言えば、それほど女性たちに攻撃されないのではっ――

 職場で『女の敵』扱いされている黒野先輩は女性陣からモンクを言われ呆れられてはいるが、憎まれている感じはない。理沙が言うように何となく許されている感がある。

 そう、今もなお続いている先輩のセクハラは『しょーもない戯言』『お約束』として、実は女性たちに受け入れられている気がしなくもない。
 常日頃の先輩と女性職員たちのやり取りも、じゃれ合っている感じだ。

 だが、問題がひとつだけある。
 ――オレに、先輩の真似ができるのか?

 自問自答をする静也の中に燈った電飾は点滅をし、やがてその光は力を失い、鈴の音も遠くなっていく。

 ――そもそもオレは先輩の仲間になるのがイヤだったんじゃないのか。うん、やっぱりイヤだよな……。

 頭の中は闇に包まれ、シーンと静まり返る。ひらめきは幻だったようだ。

 と、再び暗闇の思考の世界に入りかけた静也の腕を理沙が引っ張る。
「さあ、ケーキをゲットしないと。ボヤボヤしていたらデパ地下が閉まっちゃう」

 二人は繁華街へ繰り出し、近くのデパートへ向かった。どこもかしこもクリスマス。あちこちに飾られている華やかなイルミネーションに心が弾む。

 閉店にはまだ少し時間があるデパート内も多くの人で賑わっていた。静也と理沙はデパ地下のお惣菜コーナーを巡り、今夜の晩餐を選び、ケーキを買う。

 紅と深緑のクリスマスの洒落た飾りつけを眺めながら、静也も考え直す。

 ――子どもができたら、こうして夫婦二人で夜の時間を自由に心置きなく楽しむこともできなくなるだろうし……子どもはもうちょっと先でいいか。

   ・・・

 煌びやかな街を後にした二人は、古ぼけた賃貸アパートの我が家に帰ってきた。ドアを開け、暗がりの玄関で電灯をつけると、雑然とした生活臭漂ういつもの日常が現れる。
 魔法が解けた気分になるものの、ホッともする。やっぱり我が家が落ち着く。

 外套を脱ぎ、部屋着に着替えた理沙はさっそくクリスマス・メニューに取りかかった。甘辛ソースを塗ったチキンをオーブンで焼いている間、昨日の夕食で残ったカボチャのポタージュスープを温め直す。その間に静也は食器を用意し、デパ地下で買ったお惣菜を皿に盛る。

「チキンは時間がかかりそうだから、先にポタージュとお惣菜をいただこう」
 理沙が湯気をまとわせながら、温まったスープを運んできた。

 暖房は点けてはいるものの、部屋はまだ寒い。
 まずはアツアツのスープで体を温めることにする。とろけるようなポタージュの濃厚な味わいが体のすみずみまで沁みわたる。

 人心地ついたところで、シャンメリーも開ける。本物のシャンパンでないけど、これで充分。栓を抜くポンっという音に、何気に頬がほころぶ。

「ちなみにシャンパンの『シャン』と、メリークリスマスの『メリー』を合わせて『シャンメリー』っていうんだよな。日本生まれの独特の飲み物らしいな」
「へえ~」

 二人はシャンメリーを注いだワイングラスを合わせた。
「とりあえずクリスマスに乾杯」

 黄金色の細かい泡がキラキラと輝き、クリスマス気分を盛り立てる。大人用シャンメリーなので甘すぎず、炭酸が効いてすっきりした味わいだ。心地よい刺激がのどを通っていく。

 お腹が空いてきたので、パン専門店で買ったブールを頬張った。添加物不使用、イーストを使わず天然酵母で時間をかけて発酵させたパンだからおいしい。

 静也の胸に幸せがじんわりと広がる。再び、クリスマスが楽しいと思えるようになったことに感謝する。

 ――7歳で母を、8歳で父を亡くした後、静也はクリスマスが大嫌いになった。お正月も嫌いだった。
 家族がいない現実を突きつけられ、ただただ寂しさだけが募る辛いシーズン。心に蓋をし、斜に構え覚めた気分でやり過ごしていた。

 でも理沙との縁が結ばれた今は違う。

 静也はシャンメリーの泡を舌の上で転がしながら、食卓に飾っている小さなおもちゃのクリスマスツリーを見やる。

 ――子どもができたら、床に置くでっかいツリーが欲しいよな。いや、その前にツリーが置ける部屋が必要だな。昇給したら広い部屋を探そうか。

 あれこれ将来の夢と希望を思い描いているうちに、チキンの焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。

「焼けたみたいね」
 理沙がキッチンへ行き「アチアチ」言いながら、ジュウジュウ音を立てているチキンをオーブンから取り出し、食卓へ運んできた。

「いただきます」
 立ち上るおいしそうな匂いと湯気に食欲が躍り出す。こんがりキツネ色に焼けた甘辛味のチキンにパクつく二人。

「旨~」
 皮はパリパリ、中はジューシー。手や口の汚れは気にせず、口の中でほどけていくチキンをひたすら堪能。

 シャンメリーを飲み干し、赤ワインを開ける。
 安物のテーブルワインだけどチキンによく合った。お惣菜のサラダとの相性もなかなかだ。

 締めはショートケーキと紅茶。二人のお腹は大満足。
 四条家としてはちょっと贅沢な聖夜の晩餐だった。

 その後、ほろ酔い気分となった二人は、黒野先輩に言われるまでもなく、ありのままに『性なる夜』を過ごしてしまい、それは子どもというプレゼントに化けたのだけど、これはまた別のお話。

 というわけで――静也の『憲法を盾にしたセクハラ覚悟の女性陣への戦い』はうやむやになり、男の人権についても、そう差し迫った問題でもなかったので、どうでもよくなってしまった。

 戦わないで済むなら、それに越したことはない。
 平和が一番。

 何はともあれ、クリスチャンでもないのにクリスマスを祝って楽しむ、おおらかで豊かなこの日本の暮らしに乾杯。

 メリークリスマス。


児童相談所児童養護施設……子どもを一時的に預かる場合、まず児童相談所が面倒をみる(その間、子どもは学校へ行くことができない)が、長期化する場合、児童養護施設へ送られることになる。

児童養護施設出身者で大学などに進学した者のうち16%(一般進学者の中退率は2・7%――2018年調査)が中途退学するという。ちなみに2014年では3割近くが中退していた。18歳以上になれば施設を退園しなければならず経済的に苦しい立場に追い込まれることも理由のひとつだろう。今現在(2017年より)22歳まで施設に居住できるようになっている。

 

 

※次話

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