ショパンについて☆生涯・エピソード・女性関係・死因と取り出された心臓・ショパンコンクール
芸術の秋じゃの。
芸術といえば、クラシック音楽。クラシック音楽といえばショパン。
ということで、作曲家でもありピアニストでもあったピアノの詩人・ショパン様について、その生涯、家族関係、恋愛関係、死因(結核と言われているが、実は……)、そしてショパンコンクールについて語る。おすすめ関連本も紹介。
これであなたもショパン通。
そう、『ショパン様』はワシの数少ない得意分野なのじゃ。
(ちなみに他の音楽家については無知じゃ)
↑う、ショパン様、神経質そう~
目次じゃ!
ショパンエピソード・その生涯とは
草食系ショパンの女性関係
芸術家というと、まあ、世の人たちはたいてい「はちゃめちゃ」「変人奇人」「破天荒」「生まれ育った環境も異質」「非常識」「貧乏」という言葉を思い浮かべ、あと「女性関係も派手」というイメージも持っていることじゃろう。
んが、かのショパン様は神経質だったけれど、真面目、道徳的、礼儀正しい常識人であったようじゃ。
おまけに高収入。レッスン料で稼ぎまくり。演奏会はあまりしなかったけど、人気者だったんで、1回演奏会すれば、数か月遊んで暮らせるほどの収入を得ていた。
モテていたにも関わらず、女性関係も真面目。何度か恋はしたが、二股かけるとか、女性を泣かせるとか、そんなことはしない。恋の相手一筋じゃ。
※一方、パリの社交界でショパンと人気を二分していたフランツ・リストは女好きで女性関係も派手だったようじゃの。
ショパンは草食系、リストは肉食系といったところじゃ。
実際、ショパンさまはお肉は嫌いだったし、食が細く、170cmの身長に対し45kgとスーパーモデル並みに痩せていたらしい。パスポートに記録があるようじゃ。
(病気で伏せていた時はさらに痩せていたことじゃろう。ちなみにココアが好き)
そんなショパン様、童貞喪失は19歳の時。
ウィーンでその手の商売女と。
いやいや、恐ろしいよな。ショパン研究者らの手によって、プライベートな手紙の内容が暴かれ「ショパンは19歳で云々」と言われてしまうのだからな。
後世に残る歴史的有名人になると大変じゃの~。
ちなみに誕生日は3月1日となっておるのじゃが、2月22日説もあったりして……誕生日がいまいち定まってなかったりする。なのに初エッチの時期は定まっておるようじゃの。
んまあ、とにかく、そういうこともあったが、恋愛は極めて真面目だったようじゃ。
商売女とのそれと、恋愛とは別なのじゃ。
肉食女子・愛人ジョルジュ・サンドとの暮らし
ジュルジュ・サンドは、今で言う肉食女子。もちろん、サンドのほうからショパンにアタック。
最初はサンドを好く思っていなかったショパンも惹かれるようになり、愛人となるのじゃ。
保守的で道徳的なショパン様ではあったが、結婚はしなかった。まあ、サンドのほうはバツイチ子持ちだったしの~。
んで、最初は愛人関係だったんだけど、なにしろショパンは病弱。なのでサンドのほうで、そういったことから遠ざかるようになり、ショパンを『坊や扱い』し、母親のような感じになってしまう。
自分を男性として扱ってくれないサンドに、ショパンはモンモンとしていたそうじゃが、病弱なので仕方ない。
おまけに少食なショパン。いかにして好き嫌いの激しいショパンを食べさせるか、サンドは料理にいろいろ工夫をし、とにかく世話をしたようじゃ。
世間では「愛欲にまみれたサンドがショパンを無理させて弱らせたからショパンの寿命が縮んだ」なんてささやかれたことも過去にあったそうだが、逆じゃ。
いかに肉食系女子でも、病弱な草食系男子を無理させるようなことはしなかったのだ。
しかも、サンドは他に男を作ることもなく(ちょっとくらいの遊びはあったかもしれぬが)、女ざかりの9年間、草食系ショパンを支えたのじゃ。
肉食系女子なのに、その9年間は『肉』を断っていた、と言ってもいい。
そんなサンドはショパンとの関係を『友情』と捉えていたようじゃ。
結核になったら血を抜き取る当時の医療
それにしても、長いことショパンと一緒にいたサンドに結核がうつらなかったのが不思議じゃの~。
サンドと結ばれて間もなく、マジョルカ島へ旅行に行った時、さっそくショパンは倒れて、医師から結核にかかっていると診断されてしまう。けれど、その時はサンドもショパンも医師の言葉を信じず、単なる『気管支炎』だと思っていたそうじゃ。
※当時、スペインなどでは結核は伝染すると考えられ、患者を隔離していたが、フランスでは遺伝性のものと考えられ、隔離しなかった。
ちなみにショパンさまの時代、結核といえば、その治療法は『瀉血』じゃった。
そう、静脈から血を大量に抜き取るのじゃ。もちろん、それは誤った治療法じゃ。そんなことをしたら、かえって体力が奪われ、病状を悪化させる。
この治療法、1300年代からあったようで、1300年代を舞台にした『大聖堂』という海外小説にも『瀉血』が出てきたっけ。
※『大聖堂』お薦めじゃ。大長編だけど面白い!ドラマ化されNHKでも放映された。 ちなみに続編にあたる『大聖堂 果てしなき世界』は前作『大聖堂』より約150年後の話。
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『大聖堂 果てしなき世界』では黒死病(ペスト)の治療法として、この『瀉血シーン』がある。
この時代、病気になるのは『悪い血』が流れているからと考えられていて、病気になると何かと血を抜き取っていたようじゃ。
うむ、1300年代から、ショパンが生きていた1800年代まで、同じような医療が施されていたみたいじゃの。
たしか、ショパンの若くして亡くなった妹も結核だったので、蛭に血を吸わせていたんだとか。
とにかく『血を抜き取ることが良い』とされていた時代じゃ。
でも、この瀉血はショパンには施されなかった。通常、瀉血は足の脛あたりを切開して血を抜き取るのだが、怖がりやのショパンはそんな痛そうな治療を嫌がり、拒否していたようじゃ。
ああ、拒否して大正解。瀉血=血を抜き取られていたら、体力が消耗し、もっと若くしてこの世を去っていたことじゃろう。
そして食事に気遣いしてくれたサンドの献身があったからこそ、ショパンの健康はなんとか保たれていたようじゃ。
それでも、サンドの息子モーリスが成長し、年頃になると、ショパンを嫌うようになり、息子を溺愛していたサンドもショパンから気持ちが離れてしまい、別れることとなる。
まあ、息子モーリスから見たら、ショパンは母サンドの手を煩わせる『神経質で病弱で面倒な男』だもんなあ。
ショパンの晩年と死因
というわけで、晩年は孤独だったと言われるショパンだが、傍にはワルシャワからわざわざ看病に来てくれた姉のルドヴィカがいて、何かと援助してくれる友人や弟子たちもいて、言われるほど孤独ではなかったようじゃ。
それにショパンは「体力がない」「病弱」と言いながら、馬車でパリからノアンまで旅をしたり、病気で体がかなり弱っていた晩年もイギリスを旅したりしていたわけで……現代人よりもよっぽど体力があったかもしれぬの。
そして、ショパンは39歳で亡くなった。
死後、心臓が取り出され、姉のルドヴィカがその心臓をワルシャワまで運び、今もその心臓はワルシャワの聖十字架教会に保存されている。
が、その心臓はかなり肥大していたようで、一方、結核に冒されていたという肺はそれほどやられていなかったらしく、心臓の肥大がショパンの命を奪ったのではないか、とも言われている。
(心臓が肥大すると、心臓の動きが悪くなり、呼吸困難になる)
最期、ショパンは呼吸が苦しくなり、かなり苦しんだようじゃ。
写真で見たのじゃが、ショパンの実際のデスマスクは悶絶の表情で、かなりショッキングだった。
一般に出回っているショパンのデスマスク像は、後から修正されたものだ。
穏やかに眠るように亡くなったわけではなかったのだ……。
ショパン国際ピアノコンクール
5年に1度、ワルシャワで開かれるショパン国際ピアノコンクールについて語ってみる。そう、漫画『ピアノの森』に出てきたあのコンクールじゃ。
※ちなみに、盲目のピアニスト・辻井伸行氏は17歳の時に挑戦したが、本選へ進めなかったが、前記事『コスパが悪い音大☆上野学園紛争・解雇されたピアニスト』で話題にした辻井氏の師匠である横山幸雄氏はこのショパンコンクール入賞者である。
で、そのショパンコンクールだけど――予選を勝ち抜いてきたコンテスタントは、よほど大きなミスをしない限り、技術云々が理由で、落とされることはまずないだろうな。
じゃあ、どういったことを審査するのかというと――
まずは将来性。
この場合は手っ取り早く「若いほうが有利」となる。
そして個性。
んが、あまりに個性的だと「その演奏(曲の解釈)はショパンではない」「ショパンらしくない」とされ、落される。
けれど「ショパンらしい演奏とは何か?」となると、これもきちんとは説明できない。誰もショパンの演奏を聴いたことがないのだから。
曲の解釈も人それぞれあるだろう。
というか解釈が同じで、誰もが似たような演奏をしてはつまらないだろう。
審査員が思い描く『ショパンらしい演奏』はそれぞれ違うはず。
ま、聞くところによると――
ショパンの演奏は、繊細だけど、その分、ホールの隅々まで音がいきわたることがなく、ホールではなく、サロン向きのピアニストだった。
ショパン自身、自分の曲はホール向きではない、と思っていたようである。
ということは、ショパンらしい演奏とは、そんなに「大音量で弾いてはいけない」ということになるが……あまりに音が小さく、ホールの隅々まで音が届かない演奏だと、たぶん落とされるだろう。
『退屈な演奏』もダメ。
けど、その演奏を退屈に思うかっていうのも審査員の主観で決まる。
しかも、おもしろすぎると『ショパンらしくない』ので、これもNGだ。
あと、他に審査される要素は『華があるかどうか』『オーラがあるかどうか』と……実に曖昧。
ある程度のレベル以上の技術を持った者が競い合っても、順位や勝ち負けを決めたり、点数なんかつけられない。それが芸術というものである。
でも『コンクール』なので順位をつけなくてはならない。
人はやっぱり優劣を競い合い、ランク付けしたい動物なので、芸術系にも競争を持ち込んでしまうのである。
多くの聴衆が聴きにくる「お祭りでもあるコンクール」は自分を宣伝・アピールできる良い場と考えているピアニストは多いだろう。
が、やっぱり「勝ちたい」という欲は捨てられないはずだ。
そういったことがあまり好きそうではないショパンは眉をひそめるかもしれないが、お祭りとしてコンクールを楽しむのもいいかもしれない。
一般の人にもおすすめ・ショパン関連本
ショパンゆかりの地―ポーランド、プラハ、ウイーン、パリ、マヨルカ島、ノアン、ロンドン、スコットランド―ショパンが見たであろう風景の写真集。旅行気分も味わえる。
もちろん、ショパンについていろいろと説明がある。そう、現在のピアノに較べ、ショパンの時代のプレイエルピアノは鍵盤は軽く、同じ音を連打する場合、鍵盤が完全に上がりきらないと次が打てず、また高音にいくほど音も弱くなっていくため、ショパンは高音域にいくに伴って、クレッシェンドを書いていたが、これは音を大きくするという意味ではなく、同じボリュームを保ちたいという意味のクレッシェンドだというのは勉強になった。
ほかには、こんなショパン関連本がある。
↑生涯の大半をパリで過ごしたショパン。
ショパンについて語りながらパリを案内してくれる美しくおしゃれな写真集。
↑ピアニストのフジコ・ヘミングの味わい深い言葉がそえられた、ショパンが活躍した芸術都市パリの写真集。
仲の良いショパンの家族
↑この本の著者はヴァイオリニスト千住真理子さんのお母様の文子さん。子育てに役立つ本かも。
兄妹も仲良く、家族愛に満ちている千住家。
子どものときは仲良くても、大人になると、きょうだいって、離れていく場合もけっこうあるけれど、千住家はそのようなこともなく、真理子さんがストラディヴァリウスを手に入れるまで、お兄さん達も相当助けてくれたらしい。
それにしても3人兄妹そろって芸術家になれた、というのも、めずらしい。
※長兄は画家、次兄は作曲家。
ところで、なんで千住家を話題にしたこの本を『ショパン関連』として紹介するのかというと、ショパン家に似ているな、と思ったからだ。
ショパン家も、お父さんの教育方針がしっかりしていて、きょうだいも仲良く――大人になっても、きょうだい愛は弱まることなく、深い絆で結ばれていた。
遠くパリにいたショパンは何かと家族たちと手紙のやりとりをし、現在もその手紙が数多く残っている。
ショパンは家族に愛され、家族に恵まれた作曲家だった。手紙のやりとりだけではなく、病床についたショパンの許に、姉ルドヴィカが幼い娘を連れて、はるばるワルシャワからやってきて、最期までの数か月間、ずっと看病してくれたのだ。そんなことをしてくれる家族・兄弟姉妹って、まあ、いないよな。
その代わり、ルドヴィカは夫との関係が冷え込む。そりゃあ夫を放って弟の看病のために数か月も家を空けてしまうんだもんなあ。
ルドヴィカにとって『弟ショパン>夫』――弟のほうが大事だったようじゃ。
てなわけで『家族・家庭に恵まれた芸術家』ということで、千住家とショパン家が重なったのだった。
ピティナ漫画『ショパン物語』
ワシがピティナ(全日本ピアノ指導者協会)で描いていたショパン漫画の話をしよう。
漫画ではショパンの髪型や容姿はずっと同じだけど、若い頃の髪型は、耳も出てたし、ごくごく普通の髪型のようだったようじゃ。また、お髭があった時期もあった。
けど、やはりショパンといえば、お写真も残っているあの独特な『耳を隠した1.9分けの髪型』じゃ。ちなみにシューマンも同じような髪型じゃの~。
なので漫画のショパンは少年時代から39歳までずっと変わらず同じ姿をしておる。
漫画なので、そこんとこはお約束というか、キャラは同じ姿でないと分かりにくいので、そうなるのじゃ。
それに、いつ頃『耳を隠した1.9分けの髪形』になったのか、お髭はいつ生やしていたのか、正確には分からないのじゃ。
目もずっと陰のまんまで「モアイ像みたい」と言われていたっけ^^;
まあ、ご興味持った方は無料で読めるし、芸術の秋ということでピティナの『ショパン物語』に立ち寄ってみてくだされ。
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