これも何かの縁

ピアノとマンガの道を歩んできたハヤシのエッセイ・イラスト・物語集

音大はコスパが悪い☆上野学園紛争・解雇された有名ピアニスト

音大をネタに語ってみようぞ。ちなみにワシは東京音楽大学(ピアノ専攻)出身じゃ。

目次じゃ!

 

この頃よく聞く「コスパが云々」という話。
恋愛や結婚、子どもを持つことも「コスパが悪い」と敬遠する人が割といたりする。

そこでふと「大学進学ってコスパがいいのかな」と思ってしまった。
就職に有利な名の知れている大学ならそこそこ得なのかしら。

大学行くのに返済義務のある奨学金(教育ローン)を利用する人もいる。
でも、就職が上手くいかず、借金を返すのに苦労し、カツカツの生活をしている人もいるようで、そんな話を聞くと「大学ってそこまでして行く価値があるんだろうか?」と疑問に思う。

そういえば以前、テレビ朝日で『貧困女子』をテーマにした番組があったっけ。

約800万円の教育ローンを借りて音大へ行った女性が登場したのだが、卒業後は事務の仕事で17万円ほどの給料から毎月3万円が返済に充てられ、その返済期間が50歳近くまでかかることで、不安を抱えながら生活が大変そうであった。

いやあ、借金してまで行く価値は音大にはないぜ……。しかも800万円も。

だって結局、音楽とは関係のない事務の仕事に就くことになったわけだし。

つうか、そもそも音大はコスパが悪いんじゃ~。

ということで、もっともコスパが悪いと言われている音大の話をしよう♪

学費がかかる音楽大学を損得勘定で考える

音大(ピアノ科)へ進学するメリット・デメリット

昔、音大へ行くメリットは「結婚の条件を良くするため」という感じだった。
少なくとも親御さんはそのつもりだっただろう。
いい条件の男性と結婚し、家庭に入った後、小遣い稼ぎにピアノを教える――それが一番だと。

プロのピアニストになれるものなど、ごくわずか。
よくて音大の大学院・研究科に残り、講師になれるかどうか、だ。
しかも多くは常勤講師にはなれず、非常勤だ。あまりの待遇の悪さに辞める人もいる。

で、その後の人生においても「音楽が捨てられない」となってしまうと、結婚も難しくなる^^;

そう、結婚の条件が「グランドピアノを置きたいから、それなりに広い部屋と防音も必要」「ピアノの練習時間も欲しい」となるからだ。
自分の経済力でそれが叶えられればいいが、ま、ピアノの先生じゃ無理。

結局、高い条件を、結婚相手につきつけることとなる。
けど、相手に高い条件をつきつけられるほどの価値が自分にあるのか? というと、はっきり言って、ない!

じゃあ、その条件を捨てていいっていうほどの結婚相手に巡り合えるのかというと――
仮に巡り合ったところで、そんな素敵な相手から選ばれることは、まあ、ないだろう。
うむ、これが現実じゃ。

のだめカンタービレ』で「音大生は不良債権」という言葉も出てきた通り、学費がかかるわりには、卒業後、一般企業への就職には困り、ピアノの先生・講師業ではお小遣い程度の稼ぎしか得られない。

よくて公立学校の音楽の先生。つまり公務員だ。

私立学校の音楽の先生は常勤か非常勤かで違うだろうが、どっちにしろ、さほど待遇はよくないだろう。

けど、教師になるなら、何もお金がめちゃくちゃかかる音大に行かなくても、『教職課程と音楽科』がある一般大学へ行けばいい。

楽器店のピアノ講師業に至っては、悪くするとコンビニのバイト以下の稼ぎとなる。レッスン料の半分は楽器店に持っていかれてしまうし。自宅でピアノ教室を開いても、どれくらい生徒が集まるのか。

とにかく稼げない。音楽でマネタイズするのは難しい。クラシック音楽市場は狭い。

そういったことも関係してか、収容定員数を割る私立音大が増え、平成17年度、2万人いた音楽関係の学科の学生数は、平成27年度には1万6千人に減ったという。

少子化の影響もあるだろうけど、「音大はコスパが悪すぎ」と現実的な考えをする人が増えたのだろう。

かつては「音大は結婚の条件にいい、結婚後は家庭に入り、ピアノなどを教えたりして小遣いを稼ぎ、優雅な奥様生活」を目論み、音大に夢を持ったお嬢さんや親御さんも多かった。一般企業への就職は考えなかった。

「女性は就職しても結婚までの腰掛け」という考えの人も多く、親もそのつもりだった。

が、今は女性も仕事をし、稼がなければいけない時代となり、音大にそれだけお金をかけるなら、別のことにかけたほうがいいと考える人が多くなったのだろう。

それに音大に行かなくても、ピアノなどは個人で先生について勉強できる。

昔は、一般の人が音大の講師・教授にレッスンしてもらうというのは難しかっただろうが、今は音大の講師や教授のほうが生徒を欲しがり、趣味で弾きたいという一般学生や社会人にも門戸を開いている。
で、何と言っても教授たちは優しくなった。親切になった。

音大も学生を得るために、いろいろとサービスが良くなったと聞く。

かつて……音大の講師・教授先生は相当、威張っていた^^;
それどころか、教え方もなんだかなあ……という先生がけっこういた。
底意地悪な先生もいた。はっきり言って殿様商売だった。

とにかく音大の講師・教授先生は『先生様』であり、生徒側からは何も言えないという雰囲気だった。

けど、今は違う。先生がそんな態度でいたら、生徒のほうから切られるだろう。

ネットのおかげでたくさんの情報が手に入り、いろんな奏法、練習方法が動画で見られるようになり、独学も可能。

ワシも今の時代ならば、音大は勧めない。
音大へ行っても、主になるのはレッスンだ。そして一度、先生が決まってしまえば、先生を替える、というのも容易ではない。

音大に行かず、個人で先生についたほうがいい。
万が一、その先生と合わなければ、やめることもできる。ほかの先生へ簡単に替えられる。

音楽専門の学科も、個人で勉強しようと思えばできる。
ソルフェージュ音楽理論も和声学も、個人教授してくれる先生は簡単にネットで見つかるだろう。
音楽史は独学が可能。本でもネットでも調べられる。

※ちなみにショパンのことが知りたいなら、漫画「ショパン物語」がよいと思うぞ。

仲間がほしいなら、ピアノなどの音楽関係のサークル、コミュニティもネットで簡単に見つかる。
発表会や演奏の機会もそういったところで得られる。

今の時代、音大へ行くメリットをあげろ、と言われたら――
う~ん……まるでメリットが思い浮かばない。

今時、「音大=結婚の条件が良くなる」はないだろう。
条件のいい人と結婚したいなら、音大行くよりも、若さで勝負(20代前半で婚活)したほうがいいだろうし。

よほど「音楽漬けの学生生活を送りたいんです」っていうんじゃない限り、音大へ行く意味が見つからない。
ピアノなどの演奏技術は音大へ行かなくても得られるのだから。

卒業後、音楽で飯は食えないし、一般企業への就職を目指すなら一般大学へ行ったほうがずっといい。やっぱり音大出は昔よりは多少よくなったとはいえ、いい就職先はなかなか見つからない。

音大はバカが行くところ?

そうだ、耳の痛い話をしておこう。
ヴァイオリニストの五嶋龍氏は以前、こんなことを言っていた。

「音大はバカが行くところ」

※2010年7月、テレビのインタビューにて「なぜ音大に進まなかったのか?」との質問にそう答えていた。つい、口を滑らせてしまったのだろう。基本は英語で生活してきたから、日本語があまり得意ではないというのもあるかもしれない。

当の五嶋龍氏はハーバード大の物理学を卒業している。
本当に頭のいい人は何でもできるのである。

そう、東大生のほうがピアノが上手かったりする。
医者でピアニストというのもけっこういたりする。

彼らは短時間の練習で、事足りるのである。
(まあ、ショパンも「練習は1日3時間でいい」と言っていたっけ)

音大に行かなくても弾けるヤツは弾けるのじゃ。

んで、なまじ音大に行っちゃうと「音大出のくせに、その程度しか弾けないの?」と厳しい目で見られることもあるしね。アマチュアで上手い人、たくさんいるからなあ。

ま、ワシの時代から、音大生は「専門バカ」「世間知らず」「大学受験をしていない=学力不足」「視野が狭い」と言われてきた。
ピアノの腕もプロのピアニストには遠く及ばない人がほとんどだ。

音大の入試は、実技が難しいとされるけど、課題曲を半年かけて憶えればいいのだから、ラクといえばラクかもしれない。それより一般大学の広範囲におよぶ学科の勉強のほうがよほどキツイのではと思う。

 で、結婚した元音大生は、たいていグランドピアノを実家に置き、子育てなどで忙しくなりピアノは弾かなくなる人も多い。弾かなくなると、とたんに腕は落ち、取り戻すのは大変だ。
練習するにしても、マンションでは防音しないと近所迷惑。
で、実家に置いてきたグランドピアノは粗大ゴミとなる。

うん、やはり相当にコスパ、悪いかも。現実的な暮らし・生活を考えるとなおさらね。

ちなみに東京芸大では、学長がこんなことを言っていたそうだ。
「芸大に入っても、将来の保障にはならないから」と。

音楽のほうで芸大に入るには、そりゃ、めちゃくちゃコスト(お金と時間)がかかる。国立だから学費・授業料は安いといえど、子どもの時からの半端ではない高額なレッスン料を思えば、かなりのお金だ。
けれど、芸大出身者は稼げるか? となると、大いに疑問なのである。

ま、芸大出のメリットって、「芸大、すごいね」と人から一目置かれるくらいかも。

音大は、コスパ=お金のことを考えなくていい経済的に余裕のある人が行けばいいと思う。

心の底から「人生、お金じゃない」と言える余裕のある人こそが「コスパ無視の生き方」ができるのかもしれない。

ピアニストの脳の働き・ジストニアにご注意

音高・音大へ進学したワシが思うに、音楽専門としてもっと実利的なことを学びたかったよなあ。

たとえば手や指の仕組み・解剖学、神経や脳の仕組み、それに関する病気のこととか。
みんな、腱鞘炎くらいしか知らないだろ?

そこで、まずピアノ弾きにお勧めする本を紹介。

ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと

ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと

そう、指には筋肉なんてほとんどないから「指を鍛える」なんていう考えはナンセンス。

指は、前腕の筋肉とつながっている腱によって動く。
つまり神経がモノを言う。
だから『ジストニア』など神経・脳の病気にも気をつけないとならない。

ピアノ弾くのに『指を鍛える』なんていう考えは時代遅れ。

昔、鍵盤をわざわざ重くしてもらって、指の訓練していたけど、あれはうさぎ跳びと同じく、無駄どころか有害な練習法じゃったの~。

巨匠ホロビッツ(自分のピアノを演奏会場に運んでコンサートしていた世界的ピアニスト)のピアノの鍵盤なんて羽のように軽かったんだとか。

で、指の無駄な上下運動はできるだけ控え、腕や手首の動きを最大限に利用して弾く『エコな奏法』(重力奏法)が主流。

指なんて鍛えても仕方ないのだ。それよりも、いかに指に負担をかけないかが重要じゃ。

んで、実は奏法だけではなく、脳の活動も『エコ』を目指しておるのじゃ。 

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

ピアノを弾く素人とピアニストの脳を調べたところ、どっちが脳を活性化させていたかというと、なんと素人のほうじゃった。

つまり、ピアノの練習とは『脳をさほど活性化させなくても弾けるようにすること』=『脳をさほど働かせなくても、自然に指が動くように神経回路をそのように作り上げること』を目的としているということじゃ。

だから神経の病気=ジストニアには注意。腱鞘炎よりもよほど厄介。
けど、こんなこと音高・音大で教えてもらったことはない。

※『ピアニストの脳を科学する』は一般の人にも分かりやすい本です。お薦めじゃ。

音大(上野学園)お家騒動

上野学園創業家10億円着服・それを有名ピアニスト・横山幸雄氏が実名告発」ということで――上野学園では、その横山幸雄氏が解雇され、大問題になっている。
横山氏は財政難が続く上野学園へ経営改善を求め、前理事長への役員報酬などをめぐり、対立していたらしい。

今も紛争中。
三者委員会の報告書全文開示せず、上野学園を牛耳る石橋家の独裁体制が批判されている。

さて――横山幸雄って誰? というそこのあなた、うむ、説明しよう。

横山幸雄といえばショパン国際コンクールの入賞者であり、有名なコンサートピアニストだ。『熱血ショパン弾き』でもある。
そして、あの盲目のピアニスト辻井伸行氏の師匠でもあり、炎のピアニストとも呼ばれている。
そう、テニスの松岡修造ピアニスト版って感じの名物ピアニストじゃ。

普通、それだけ活躍しているコンサートピアニストって、音大には名誉教授として名前を貸すだけで、こういったゴタゴタにタッチしない。
けど、横山さんは違うようだ。教育にも深く関わり、とことん戦う熱き男。

↓『新しい上野学園を作る会』を起ち上げた横山幸雄氏はこんなメッセージを発信。
新しい上野学園を作る会とは何か、その活動経過について

おお、さすが炎のピアニスト、熱い、熱い、熱すぎるぜ、横山さん。
(ちなみに女好きでもある。何度も結婚離婚を繰り返す恋多きピアニストじゃ)

上野学園紛争についてほかの人の意見、紹介しておこう。
https://twitter.com/ugmondai/status/841432511737610240より

上野学園の次年度人事…新しい上野学園を作る会で理事長一族による長年の不正を指摘し改善を求めた先生方がこぞって解雇と降格処分…異常極まりなく、また、とてもわかりやすい決定…上野学園は終わった。

https://twitter.com/ugmondai/status/841800208258281472より

横山幸雄先生の不当な解雇について報道されてる事を嬉しく思いますが、一つ大きな間違いを指摘させていただくと、上野学園問題は経営の対立ではありません。石橋家の長きに渡る不正について横山先生はじめ新しい上野学園を作る会の教職員・学生生徒・保護者・卒業生らが異議を申し立てている問題です。

ちなみに、ワシは音大のこういったところが気になる。
たとえば――立派なホールを持っている音大があるけれど(上野学園もそうだ)、その建設費用は、設備費として学生たちから入学金や授業料やらと一緒に集めているだろう。
が、建設費用含めその金額は適正なのか、それらを負担する学生らはホールを適正に利用できているのか?

ワシの音大時代、各レッスン室にスタインウェイヤマハ、2台のピアノがあった。
スタインウェイはめちゃくちゃ高い楽器。ヤマハとは比べものにならない。

が、先生によってはレッスンなのに学生にはスタインウェイを使わせず、ヤマハを使わせて、実技試験前になって「今日は特別にスタインウェイを触らせてあげましょう」というケチな先生もいた。
で、先生ご自分の練習にスタインウェイを使っていたりするのだ。
※ワシの先生は日頃のレッスンからスタインウェイを使わせてくれていた。

いやいや、設備費は学生側が負担しているのだから、普段から学生にスタインウェイを使わせるのが筋だろう。学生側の当然の権利だ。

さすがに今の時代、そんなケチな先生はいないとは思うが、とにかく音大は設備費が、一般大学と違ってめちゃくちゃかかる。で、マンツーマンの個人レッスンがあるため、学費・授業料が超~高くなってしまうのだ。

けど、これらは本当に適正価格なのか? そして施設費・設備費を負担する学生側に適正に使用させているのか? いろいろ疑問がある。

改めて思う。
大金払って音大って行く価値あるのかな、と。

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↑この記事によると――偏差値は芸大61、東京音大はなんと40、ほか国立や昭和、武蔵野にいたっては35~38。

競争率も芸大だけが飛び抜けている。年間授業料は約50万円(設備費など総額80万)
一方、私立の音大の年間学費(授業料+設備費など)210万~270万円。

就職率はかなり悪い。50%切っている。東京芸大は16%、東京音大30%。

経済的な観点で見る限り、コスパは相当、悪い。定員割れしている音大もけっこうある。当然だな。

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