切ない系の小説・ライトノベル『とある飛空士への夜想曲』を紹介しつつ、『キャラの死の扱い』について創作側の視点から、様々な作品――RPG『クロノトリガー』『クロノクロス』、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』、NHK朝ドラ『ひらり』――を話題にしながら語っていきます。
目次じゃ!
キャラが死ぬ切ない系の物語
最近――『四月は君の嘘』『君の膵臓を食べたい』などヒロインが死ぬ系&切ない系の物語をよく見かける。
前回『おすすめ☆恋愛・婚活作品7選』で紹介したけど、ネットで話題になった4P漫画もそうだった。……切ないけどイイ♡。
※こちらの記事もぜひ立ち寄ってくだされ↓
もちろん、男が死ぬ系の話もたくさんある。んで、遺されるヒロインのお腹には主人公の子がっ……ていうようなラストもけっこう見るよね。
そう、科学的にはこんな説があるようだ。
以下、一部引用。
男は命の危機に瀕したとき良質な精子を出す。命の危機を感じて、なんとか種を残そうという生物としての本能ですかね。映画やドラマで、死地に赴く兵士が出征前に一度だけ契りを交わし、その一回で恋人が身籠る……という感動的なエピソードが描かれることがありますが、それもまんざらない話ではありません。
ということで――
そんな切ない恋愛物語といえば、ハヤシの一押しは犬村小六氏の『とある飛空士への追憶』『とある空飛士への夜想曲』だ。まずはそれについて語ろう。
以下、ネタバレ注意。
飛空士シリーズ『追憶』『夜想曲』
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まずは『とある~追憶』から読むべし。で『とある~夜想曲』へ。
どちらもラストは切なく、感動ものじゃ。
(ま、ワシは『夜想曲』のほうが好きだけど)
この2作はライトノベルとして扱われているけど、一般のライトノベルとはちょっと違う。というかライトノベルが苦手なハヤシがお薦めするのだから、ライトノベルが好きな人はもちろん、苦手な人も楽しめると思う。
ちなみに、この犬村小六によるほかの『飛空士シリーズ』は未読だ。巻数が多いのと、やはり従来のライトノベルのイメージが強く、少女=女の子たちがたくさん登場している様子だったので。
一方『~追憶』『~夜想曲』はヒロインは一人だけで、ほかに女の子は出てこないし、ヒロインは女の子というよりも女性であり、主人公も少年ではなく男性という感じ。そして巻数も『~追憶』は1巻で完結、『~夜想曲』は上下巻で完結だ。
※誤解なきよう、ライトノベルを否定しているのではなく、単にワシが合わないというだけの話だ。
『クロノトリガー』VS『クロノクロス』
主人公含め主要キャラを死なせるか死なせないか、死なせる意味はあるのか、あるいは助けるか――物語を創作する上で考えさせられるの~。
『はじめまして』でも触れたけど、ワシは昔、RPGクロノトリガーにはまったことがある。
※ちなみにプロフィール画像に使っている丸っこい生き物はクロノトリガーのラスボス『ラヴォス』をかわいく改変したものだ。でも――1995年当初、スーパーファミコンでプレイした時は楽しんだことは楽しんだが、2度ほどプレイしただけで、はまることはなくソフトを売ってしまった。で、その後、その存在をすっかり忘れていた。さほど印象に残らなかったと言っていい。複数のエンディングがあることも知らなかった。(攻略本なしでプレイし、そういった情報も得ていなかったのだ)
10年後、再び『クロノトリガー』とめぐりあったのが、2005年プレステ版だった。
その頃『ドラクエ8』にはまり、鳥山明の画に魅了され、「鳥山明キャラデザといえばドラクエ以外にクロノトリガーもあったっけ」と思い出し、『クロノトリガー』のことを何となく調べてみると――
ああ、何ということでしょう!
『クロノクロス』という続編が出ていると知り、そこでは『クロノトリガー』に出ていた主要キャラ(クロノ、マール、ルッカ)が死んだことになっているではありませんか~~~っ
そこで急に『クロノトリガー』が気になってしまい、クロノやヒロインらは、続編『クロノクロス』では若くして死ぬのかと心をかき乱され、はまってしまったのだ。
ちなみに『クロノクロス』のキャラデザは鳥山明氏ではなく結城信輝氏。全く違う絵柄で『クロノトリガー』とは別物といっていい作品だった。
しかし、クロノトリガーファンは、主人公クロノ達を死なせた続編『クロノクロス』が許せず、アンチ派が大量発生。
クロノクロス制作側は「これはクロノトリガーのパラレルワールド編。主人公クロノたちが幸せに生きている時間軸もある」と言い訳したが……やっぱり納得できず、ワシもサイト上にてクロノクロス考察に熱く激論を飛ばしたものじゃった。
タイムトラベルモノは『時間軸分裂型か、時間軸塗り替え型か』――ここが一番大事だと思う。
『クロノトリガー』は時間軸塗り替え型(上書き型)だが、『クロノクロス』は時間軸分裂型(枝分かれ型)。
世界を構築している根本が違う。よって「クロノクロスはクロノトリガーの続編になりえない」というのがワシの考えじゃ。
クロノトリガーはエンディングが複数あるので、時間軸分裂型と勘違いしてしまうけど、ストーリー上は時間軸上書き型だ。
※『君の名は。』も時間軸上書き型じゃの~。
ま、それはともかく――
『キャラの死』というのは、そこまでの吸引力があるのだ。
ワシにとって、当初は印象に残らず忘れていた『クロノトリガー』。なのに後で主人公たちが死ぬと分かってから印象深いゲーム作品になってしまった。
それほど『主人公の死』というのは受け手にインパクトを残す。
逆に、主人公を死なせて、あまりインパクトを残せなかったら、その作品はかなり失敗……ということだ。
いや、だからこそ、主人公を簡単に死なせてはいけないのだ、とも思う。やっぱり主人公らには幸せになってもらいたいもの。
『キャラの死』は物語を創作する上でも考えさせられるテーマじゃ。
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キャラに『死のフラグ』が立つと人気が上がる
そういえば、こんな話を聞いたことがある。かつて『ひらり』というNKH朝ドラがあったんだけど――(相撲好きなヒロインと相撲部屋の面々との交流、そこに出入りする嘱託医との恋を描いたお話だ)――脚本家の内館牧子氏はこんなことを語っていた。
もしも視聴率が取れなかったら、途中で相撲部屋の親方を死なせるつもりだったと。
主要な登場人物に『死のフラグ』が立つと、視聴者を引き付けるのか、視聴率が上がるそうだ。そして、登場人物の死は視聴者にカタルシス・感動を与える。人気を取るための最終手段でもある。
プロになるとそういった計算も必要になるのかもしれないが、それだけに創作者はキャラを死なせることは、よくよく考えたほうがいいかも。
それに、一時の少年漫画にあったように『実は死んでいなかった、生きていた』あるいは『死んでも生き返る』は、今の時代では白けるかもしれないしなあ。
『クレヨンしんちゃん』都市伝説
そうそう、こんな都市伝説があるようだ。
「クレヨンしんちゃん、原作者臼井氏が考えていた初期裏設定?」として――
しんのすけは5歳で亡くなった。嘆く母みさえ。もし生きていれば、こんなに楽しかっただろうと、遺品のクレヨンで描かれた日記――それがクレヨンしんちゃん。
デマだろうけど、切ない系として「あり」なのではと思ってしまった。
もし、この設定だと、しんのすけのギャグも切なくなってくるよなあ。
次々キャラが死んでいく『さらば宇宙戦艦ヤマト』
昔、『さらば宇宙戦艦ヤマト』にはまったっけ。『ヤマト』がなかったら、ワシはマンガの道に進まなかったかも。それくらい影響を受けた作品だ。そう、『さらば~』も主人公はじめほとんどのキャラが死んでしまったっけ。だからこそ魅かれてしまったんだろうな。アニメ見て泣いた作品は『ヤマト』が初めてだった気がする。
けれど、その後――あまりに人気に『さらば~』はなかったこととされ、死んだはずのキャラが全員、生きたままで『ヤマト』は新しいシリーズを始めた。再び『ヤマト』のキャラに会えるのは嬉しかったが、今振り返れば『さらば~』でやめておけばよかったのに、と思う。
ところで『ヤマト』は木村拓哉主演で実写版映画にもなったんだっけ。ここではキムタク扮する古代進は特攻で死に、黒木メイサ扮するヒロイン森雪のお腹に子どもが……というありふれた結末になるのだけど……全く感動しなかった^^;
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切ない系おすすめ小説
切ない系としてライトノベルでは犬村小六の『とある飛空士への追憶』『とある飛空士への夜想曲』を推すが、一般小説なら、有川浩の『旅猫リポート』、知念実希人の『優しい死神の飼い方』がおすすめ。
有川浩の『旅猫リポート』は話題作なので、紹介するまでもないだろうが、その『旅猫リポート』に引けをとらないのが『優しい死神の飼い方』だ。切ない系ではあるけれど、たまに笑わせてくれるし、キャラは死ぬけどハッピーエンド。
そう、皆、死ぬのにハッピーエンドなのだ。それは読んでみれば分かることじゃ。
※内容【さあ、行こう。これは僕らの最後の旅だ。一人と一匹が見る美しい景色、出会う懐かしい人々。心にしみるロードノベル】
※内容【 ホスピス「丘の上病院」に犬の姿になって派遣された「死神」のレオ。
患者たちの未練を解き放ち、魂を「我が主様」の元に送り届けるのが仕事だが、それには過去にこの地で起きた迷宮入り事件を解決せねばならなかった。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。天然キャラの死神の奮闘と人間との交流に、心温まるハートフルミステリー】
ちなみに作者の知念さんは医師でもある。……意外と多いよなあ、医師兼作家。海道尊、夏川草介、久坂部羊、高山道爛、など。二足のわらじ履きながら、けっこうヒット作を飛ばす。天才だよなあ。
……いや、天才と簡単に片づけてはいけない。
あの幻冬舎社長・見城徹氏のいう『圧倒的努力』をしているのかもしれない。
見城氏のお言葉を思い出す。
「勝負は、勝つときもあれば負けるときもある。成功は異常なことだと思ったほうがいい。」
「3打数1安打(3回挑戦し1回成功)ならば上々」
成功の裏ではたくさんの失敗をしているんだそうだ。
成功の数が多いということは、失敗の数はそれ以上に多い。
成功者は、チャレンジの数が、人よりも並外れているとのこと。
そう、チャレンジの数がめちゃくちゃ多いので、失敗も多いけど、成功の数もその分、多いのだと。
つまり、チャレンジの数が多い=努力の量、ということになるのかなあ。
そういった失敗を糧にできる人が『成功者』になれるのかもね。
そういえば知念さん、多作だよなあ。
※知念実希人の小説作品についてはこちらにて。
何はともあれ、ワシが自信を持っておすすめする作品は、犬村小六の『とある飛空士への追憶』『とある飛空士への夜想曲』、知念実希人の『優しい死神の飼い方』、有川浩の『旅猫リポート』じゃ。秋の夜長にぜひ。
※ほか『とある飛空士への夜想曲』について語っている記事はこちら。