これも何かの縁

ピアノとマンガの道を歩んできたハヤシのエッセイ・イラスト・物語集

週刊少年ジャンプから始まった『はだしのゲン』☆昭和天皇の戦争責任

はだしのゲン 文庫全7巻 完結セット (中公文庫―コミック版)

はだしのゲン 文庫全7巻 完結セット (中公文庫―コミック版)

〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻

〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻

はだしのゲン』――漫画としては面白かったし、共感するところが割とあり、基本的にはおすすめだけど、違和感を持った部分もかなりある。

例えば、日本を過度に悪に描いていることや、反戦を謳っているわりには主人公は暴力で物事を解決。主人公の親友に至っては殺人まで犯し、己を守るため悪への制裁は仕方なかったとしていることなど……。

ま、日本を悪に仕立てるのは日本のメディアもやってきたことだから仕方ないけれど。
今回はそういったことについて語ってみよう。

目次じゃ!

ここがヘンだよ『はだしのゲン

反戦を訴えながら暴力で解決

この漫画は反戦(非暴力)、平和を訴えた話――つまり「暴力で解決するのはいけない」ということもテーマのひとつだったのでは?
しかし、主人公・ゲンは、何か問題が起こると、わりと暴力で解決しているのだ。

いや、ゲンの場合はまだ『単なるケンカ』であり、相手を再起不能にまで叩きのめさないのでいい。
だが、戦争孤児のゲンの友人(仲間)は、殺人を犯す。

もちろん、殺人を犯すそれなりの理由があるのだが――殺人で物事を解決し、それを「仕方ない」として認めているのである。

はだしのゲン』は平和や反戦を謳っているのに、やられたらやり返す、報復=殺人、暴力による解決を容認し、『暴力でしか解決できないシーン』を描いているのだ。

※おまけに物語の最後、殺人を犯した友人をゲンは助けて、逃がす。その行為に葛藤は全くなく、実にさわやかに物語は終わっている。

もちろん、仲間が殺人を犯さざるを得ない状況に陥ったのも「戦争のせいだ」ということなのだろうが……
非暴力(反戦)を訴えながら個人レベルでは報復を容認し、殺人行為を正当化し、主人公たちには暴力で解決させていることに矛盾を感じる。

きれいごとでは解決できない、暴力で物事を解決していくことを仕方なかったとするならば、日本も戦争をせざるを得ない状況に追い込まれていった、戦争は仕方なかったとも言えてしまうのでは?

少年ジャンプから左翼系機関紙へ

はだしのゲン』は当初、集英社週刊少年ジャンプに連載されていたようだが、単行本にはならなかった。
で、その後、左翼系機関紙へ媒体を移していったという。

※ウィキベディアより。
1973年第25号 - 1974年第39号 - 『週刊少年ジャンプ
1975年9月号 - 1976年8月号 - 『市民』(左派系オピニオン雑誌)
1977年7月 - 1980年 - 『文化評論』(日本共産党機関誌)
1982年4月 - 1985年 - 『教育評論』(日教組機関紙)

そう、少年ジャンプ連載分の話では、原爆の悲惨さ、主人公たちがたくましく生きる姿が描かれている漫画だったのだが、左翼系機関紙に移ってから自虐史観というか、日本軍極描写、政治的主張が始まったようだ。

史実とは違う・嘘と思われるセリフ・シーン

とりあえず「これはおかしい」と思った箇所を述べる。

愛蔵版10巻19~20ページより――主人公・ゲンは「日本軍は、中国、朝鮮、アジアの各国で3千万人以上の人を残虐にころしてきとるんじゃ」と言うが、その数字からしておかしい。

日本はこの戦争で300万人以上が犠牲になった。
アメリカに全国あちこちを空襲され、東京大空襲に広島長崎の原爆投下により壊滅的にやられた。

それでも300万人なのだ。
そのうち210万人は日本兵の数と聞く。よって空襲や原爆で亡くなった民間人は90万人ということになる。
(犠牲者数は研究者によってばらつきがあるようだが、多くて100万人である)

当時、貧しかった日本。アメリカのように民間人を意図的に狙ったそのような大々的な空襲を行う余裕もなかっただろう。もちろん原爆も持っていない。
その日本が、どうやって3000万人以上を殺せるのだ?

そして、主人公・ゲンは「三光作戦と言う、殺しつくし、焼きつくし、奪いつくす」と言って日本軍が南京大虐殺を行ったと言うが――

もはや南京大虐殺は捏造の可能性がかなり高い。民間人を巻き添えにしてしまったのは事実だろうが、民間人を標的に大量殺戮したというのは違うだろう。

それに、南京大虐殺を行ったというのであれば、ほかの地域でもやっていたはずだが、なのになぜか大虐殺は南京のみ。

また日本軍の兵士らが中国の民間人を、より残虐に殺す場面が出てくるけれど――(女性器に一升瓶を刺して殺害、妊婦のはらを切り裂き胎児を取り出して殺害などなど)――
軍隊は手間暇かけて殺人を行うほどヒマではないし、快楽殺人集団ではない。そのような『労力だけかかる無駄なこと』を、ただでさえ余裕がない日本軍が行うはずもない。

漫画に描かれているような猟奇的といっていい殺し方――これは中国人が日本人に行った通州事件や済南事件でやられたことと同じだ。(証拠の写真も残っている)
そう、これは中国側が日本の民間人に対してやったことであり、以前からある中国式のやり方だ。

それが『はだしのゲン』では、日本軍が中国の民間人に対してやった、ということにすり替わっている。

もちろん、漫画家・中沢氏は意図的にすり替えを行ったのではなく、「日本軍は中国はじめアジア各地で残虐非道なやり方で殺しまくった」というプロパガンダを信じてしまったためだろう。

戦勝国は日本を戦犯として裁くために、ナチスドイツと同等の極悪非道なことを行ったとしたかったため、戦勝国に都合のいい歪んだ歴史観が作り上げられていったのかもしれない。

反日メディアと太平洋戦争

731部隊NHKの報道について

今もなお、日本のマスメディアは日本軍が残虐非道で悪だった情報があれば、飛びつく。

そういえば2017年8月、NHK731部隊についてドキュメンタリーをやっていたが――

国立公文書館731部隊に関する機密文書10万頁が公開され、クリントン政権時に設立された調査チームが調べた結果、細菌戦・人体事件の証拠が見つからなかったことは触れなかったっけ。

公正さからは程遠い旧ソ連ハバロフスク裁判のみを取り上げただけだ。ソ連に都合の良い証言をせざるを得なかっただろう元日本兵、あるいはソ連共産主義洗脳教育を受けただろう元日本兵の録音証言で番組を構築し、731部隊がいかに残虐非道であったかを放送していた。

何だか従軍慰安婦強制連行説と同じ臭いを感じた。

ハバロフスク裁判を取り上げてもいい。だが同時に、米国立公文書館の10万頁におよぶ機密文書には証拠が見つからなかった件にも触れるべきだった。それをやってこそ公正中立な番組と言えるのではないだろうか。

日本が戦争を起こした理由

話を『はだしのゲン』に戻そう。

日本が戦争を始めた理由について主人公ゲンは「天皇と軍部とお金持ちが自分たちの欲のために戦争を起こした」と言うが、そんな単純なものではないだろう。

まず、国民も戦争をやりたがった。
当初、戦争反対を訴えていた朝日新聞が、不買運動を起こされたくらいだ。
それをきっかけに朝日新聞戦争賛成に意見を変え、以後、煽りまくった。

つまり日本の全メディアが煽り、国民もそれに乗った。世論が戦争賛成だった。

この頃はまだ、軍部はメディアに対する情報操作を行っていない。メディアが自ら、戦争賛成に動いた。

日中戦争についても、日本が中国を侵略したという経緯が明らかになってない部分が多々あり、ソ連共産主義の諜報員らに仕組まれたという見方もあるようだ。
せっかく立ち直りかけた日本経済に対し、経済的に立ち直れなかった世界(ヨーロッパ)が植民地を利用した経済ブロックを仕掛け、日本が窮地に立たされたことも大きかっただろう。

支那=中国の利権が欲しかったアメリカにも睨まれ、アメリカに石油を止められ、日本は戦争をせざるを得ない状況に追い込まれていく。

もちろん、石油を止められても、仕掛けられた経済ブロックで、どんなに貧しくなっても、国民は我慢するべきだったのかもしれない。が、それは後の結果を知っているから言えるのだ。

昭和の貧しい時は、子どもを売る親もたくさんいたという。そんな貧しい時代に逆戻りさせるわけにはいかないと、国が考えるのも当然だ。

海軍、陸軍、それぞれ思惑があっただろう。

満州についても、日本は日清戦争により正当に割譲された歴史がある。ロシアにより清に返させるが、その後、日露戦争に勝利し、この時また清と条約を結び、改めて日本の支配圏となった。

つまり、満州は正当な条約で日本の支配下に置かれたのであり、侵略して奪ったわけではない。当時のルールに則っただけだ。(ちなみに朝鮮併合もそうだ)

そして天皇は今と同じく「命令できる立場ではなかった」ようだ。つまり独裁者ではない。東條英機もそうだ。あくまで合議制だった。

逆に独裁でなかったから、強い権限がなかったから、戦争が始まってしまったとも言える。昭和天皇東條英機も、負けると分かっているアメリカとの戦争は避けたく、回避を望んでいたのだから。

戦争を終えるのも難しかった。合議制だから、なかなか結論が出ず、結論は先送りになり、ついにアメリカに原爆を落とされてしまった。

終戦を決意し、天皇が玉音を録音した後でも、その玉音テープをめぐってクーデターが起きかけたくらいだから、『天皇または首相の鶴の一声で誰もが言うことを聞く』というシステムではなかったのだろう。

ということで『はだしのゲン』は天皇と軍部についてかなり偏った見方をしている。

昭和天皇の戦争責任について

昭和天皇は戦前の大日本帝国憲法ではこういう位置づけだったようだ。

以下、ウィキベディアより。
軍政は海軍大臣、軍令は軍令部総長が行い、最高統帥権を有していたのは大元帥たる天皇であった。大日本帝国憲法では、最高戦略、部隊編成などの軍事大権については、憲法上内閣から独立し、直接天皇統帥権に属した。したがって、全日本軍(陸海軍)の最高指揮官は大元帥たる天皇ただ一人。

当然、『はだしのゲン』作者の中沢啓治氏は、昭和天皇の戦争責任について「責任はある」という考えだろう。

現に、1945年2月14日――近衛文麿総理が昭和天皇に「もはや最悪の事態は避けられない、戦争終結の方途を講ずるべき」と述べたところ、昭和天皇は「戦果を挙げてからでないと難しい」と回答したとのこと。

これについて、昭和天皇の『独白録』より、補足となりうる部分を紹介しよう。

昭和天皇の)『独白録』には「近衛は極端な悲観論で、戦を直ぐ止めた方が良いと云ふ意見を述べた。私は陸海軍が沖縄決戦に乗り気だから、今戦を止めるのは適当でないと答へた」とある。

確認しておくべきは、天皇が近衛による提案・即時停戦を拒否した、ということである。

天皇が言うのはいわゆる「一撃講和論」だ。劣勢は承知しながら、どこかで連合国軍に打撃を与えて、その戦果を持って和平に持ち込む、という構想だ。

この構想に従って沖縄戦が行われた。一撃どころか、沖縄では県民を巻き込んだ地上戦となり被害を拡散させてしまったことは、歴史が証明している。

戦争終結を促した近衛文麿に対し、天皇は続行を求めた。戦果が挙げられると見誤ってしまったのだろうか。
とにかく、軍の最高指揮官に位置づけられる昭和天皇沖縄戦・特攻作戦を支持したのだ。
特攻=『十死零生』という若者の命を搾取する無謀な作戦を止めることはなかった。

もしこの時、昭和天皇が戦争終結へ舵を切っていれば、これ以上の特攻隊・兵士の犠牲も、沖縄戦も、東京大空襲・全国への空襲、広島・長崎原爆投下もなかったかもしれない……。(もちろん、後の歴史を知っているから言えるのだけど)

右派や保守派は「天皇に決定権はなかった」と言うが、意見すること・希望を述べることはできたのだ。

天皇陛下にはいちいち細かい報告がされていなかったので、判断を誤られたのだ、だから天皇には責任はないのだ」と擁護する人もいるだろうが――
ならば、企業で何か不祥事があった時、社長にはいちいち細かい報告がされていなかったから、判断を誤ったのだ、だから社長には責任はないのだ、とも言えてしまう。

重大な責任が生じた時、社長は辞任するものだ。
が、天皇はそのままだった。

これについては、やはり違和感を覚える。
ただし、終戦直後、日本を分裂させず一つにまとめるのに天皇制が必要だったという意見には一理あると思っている。

こうして――軍部の最高統帥権・最高指揮官であったはずの昭和天皇は裁かれなかった一方、近衛氏はGHQからの逮捕命令が伝えられ、A級戦犯として東京裁判で裁かれることが決定。が、近衞氏は出頭を命じられた最終期限日の12月16日未明に、青酸カリを服毒して自殺した。享年54歳。

もちろん、東京裁判は不公正、事後法で裁かれているので「昭和天皇は戦犯だ」と言うつもりはない。東条英機氏や以下戦犯にされてしまった方も同様だ。

原爆投下についての昭和天皇の発言

こんな動画を見つけた。


昭和天皇「原爆投下はやむをえないことと、私は思ってます。」

政治家が同じように「原爆投下は仕方なかった」と発言して批判されたことがあったけれど、昭和天皇のこの発言については皆、どう思うのだろうか? 広島・長崎の被爆者の方は?
はだしのゲン』の作者・中沢氏なら当然、怒りまくっただろう。 

ただし、このような擁護コメントもあったので紹介しておく。

「この時、昭和天皇は異例の訪米直後であり、戦後最も日米が良好な時だった。その時に行われたこの記者会見で左翼記者が「原子爆弾の投下についてどうお考えですか?」と質問した。だから彼は日米関係を考慮して曖昧な表現で濁した。彼は平成天皇と違って、時代的に記者会見に慣れてないから受け答えはうまくない」

昭和天皇の「やむを得ない」ってのは当時は未知の新型爆弾の威力なんてわかりようがない上に、アメリカが秘密裏に計画していた作戦だったわけで、大本営は判断も何も事前に対処のしようがない状況で、あの時はどうしようもなかったと言いたかったんだと思っている」

昭和天皇が口下手だったのもあるけど、立場上発言した内容はかなりの影響力もあり、マスコミの前でアメリカへの恨みつらみを公言すれば余計な問題を増やすから、あえてオブラートに包んだ言い方をしたのかもしれない」

それにしても――原爆を落としたアメリカに守られて、中国や北朝鮮の脅威に屈せず、なんとか平和を維持している日本。皮肉よの……。

ただ、これだけは言えるかもしれない。人権という概念がなく貧しかった時代を、現在の豊かな社会に暮らす者が、今の価値基準やルールでもって裁くのは不遜なことかも。過去を反省するのはいいけれど。公正中立に正しく反省したいものだ。

そういえば東京裁判だって事後法で裁かれたとんでもない裁判である。

タブー・天皇制批判と核武装

毎年、皇太子一家は8月15日をまたいでご静養に行ってしまう。先の戦争で、天皇制にこだわったがため無条件降伏が遅れ、広島と長崎に原爆が落とされ、国民があれだけ犠牲になったというのに……。
平成28年だけは8月16日からのご静養だった。

しかも8月終わりにもご静養に行き、夏はいつも2回ご静養だ。そして驚くほど少ない公務に唖然とする。雅子妃はご病気というので仕方ないが、だからこそ皇太子が雅子妃の分まで公務すべきだろうに。

国民や国のことより自分の家庭のことを優先される皇太子に違和感。明治天皇は貧しい国民のことを思って旅行を制限され、即位されてから1回しか静養に行ったことがないというのに。

※皇太子の公務内容はこちらにて↓(今までどれだけの公務をしてきたのかが分かる)

皇太子同妃両殿下のご日程 - 宮内庁

天皇制及び天皇批判はタブーとされている日本。
リべサヨもこの点にはあまり触れたがらない。

で、もうひとつタブーといえば核武装議論。
9条の憲法改正議論はようやくタブーから脱したけれど。

アメリカの核傘下に入っているけど、確実にアメリカが守ってくれるとは限らないのだし、非核三原則の見直し(アメリカからの核の持ち込みはありにすべし?)、憲法改正も含め、議論すべきだろう。

キレイごとは命を守ってくれない。
もはや核のない世界などありえないのだから。

(あり得ると言うのであれば北朝鮮、ロシア、中国、アメリカ、フランス、イギリス、イスラエル、インド、パキスタンに核を放棄させてみてほしいものだ)

でもきっと理想を追い求める善なる日本国民も未だ多いようで……
尖閣が盗られるかして痛い目にあわないと目は覚めず、国防について現実的に考えられないのかもしれない。

うむ、きれいごとでは解決しないことをテーマにした戦闘漫画進撃の巨人』のほうが『はだしのゲン』よりもずっと現実的かも。

DVD付き 進撃の巨人(26)限定版 (講談社キャラクターズライツ)

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進撃の巨人 コミック 1-25巻セット

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