原作小説と違う・バルサが美人な件について☆『精霊の守り人』『獣の奏者』を語る
前回『獣の奏者・風立ちぬ VS とある飛空士への夜想曲☆キャラ・ランキング』でも話題にした上橋菜穂子の『獣の奏者』だが――
今回はそれに加え『精霊の守り人』についても語ってみよう。
目次じゃ!
上橋菜穂子作品とアニメ化・ドラマ化について
バルサが美しい?『精霊の守り人シリーズ』
小説は、よく映画ドラマ化されたり、アニメ化、漫画化されたりすることがある。
上橋菜穂子氏の人気作『精霊の守り人』も当然、ドラマ化、アニメ化、漫画化された。
が、そのアニメや漫画を見たファンの方はやはり違和感を持ったという。
ドラマ、アニメや漫画では、小説に描かれなかった背景もすべて描かれるし、おまけにバルサは『美人』である。(ドラマでは『綾瀬はるか』がバルサ役だった)
が、原作になる小説では、主人公バルサは顎がガッシリした顔だと説明されており、体つきもたくましく、いわゆる俗にいう『美人』の要素がなく、美人だという描かれ方はされていない。
そして小説の挿絵のほうは、小説で表現されていることを忠実に守り、描かれていたように思う。挿絵のバルサは顔も体もガッシリしていた。
けれど、ドラマやアニメや漫画になると、だいぶ違ってしまったようだ。
ちなみに小説の挿絵は、ジブリの人が描いていたらしいけど――
その挿絵画家の方は、小説のイメージを損なわないよう、読者の想像の余地を奪わないよう、描かないほうがいいと思うところは、あえて描かず、かなり心を配ったという。
そう、ドラマやアニメや漫画は、すべてを映像・画で見せるため、想像の余地を奪ってしまう。
で、ヒロインの容姿はやはり『良く』描いてしまうし、実写映画やドラマでは美人女優が演じることになる。
想像していたのと違い、違和感を持つ人もけっこういるのも仕方ない。
それにつけても児童文学の主人公が30代の女性というのも異色だよな……。
『獣の奏者』アニメ版に違和感
そういえば――ワシは上橋菜穂子氏の『獣の奏者』が大好きで、上橋作品の中で一番おもしろいと思っているのだけど、こちらはチラっとアニメ版を見たことがある。
で、やはり自分が想像していたのとは、だいぶ違った雰囲気だった。
※ちなみに小説ハードカバー版『獣の奏者』には挿絵は一切ない。
アニメの『獣の奏者』は、何か雰囲気が暗く、主人公エリンも表情が乏しく感じられ、小説を読んだ時のワクワク感がなかった。
そして、王獣の姿もワシが想像していたのと違った。
「なんか、違う……う~ん、微妙」――これがアニメ版『獣の奏者』を見た時の感想だ。
ところで、上橋菜穂子の『鹿の王』も読んだが、冗長で……内容がなかなか頭に入らず、読むのが辛く、『獣の奏者』や『守り人シリーズ』のようなワクワク感を感じることができなかった。
でも、この作品は多くの人から絶賛されているので、ご興味持った方はぜひ。
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話をもとに戻そう。
アニメの『獣の奏者』は、主人公エリンの少女時代までの話しか描かれていないようだが、原作である小説のほうは、大人になり子持ちとなったエリンのその後の話が描かれている。テーマは戦争だ。
劇中――兵士・軍隊に護られ、富を享受していた『戦うことを穢れと捉え、兵士を見下す一団』に対し、「富を手放す覚悟があるのか?」と問う場面がある。
そう「富を享受したいのであれば、戦いに参加せよ」ということだ。そして、多数決で決める。戦うのか、戦わないのか。
結果『戦う』ことになった。
つまり『富を手放さないこと』を選択したのだ。
戦争を描いた『獣の奏者』を評価する一番の場面でもある。とても現実的。
貧しくなってもいいから、戦うことを放棄し、降伏して相手の言うがままを受け入れ、自分たちの権利を手放すことなどできない。
絶対平和主義は難しいことを『獣の奏者』は描いていた。さすがである。
『獣の奏者』ひっかかった点
が、そんな『獣の奏者』にもひっかかった点が……。
『獣の奏者』の主人公エリンは当初、王獣に耳栓させて飛ばしていたよな。
そう『音なし笛』を吹くと王獣は硬直するので、王獣を操る時、エリンは王獣に耳栓をさせていた。誰かが吹いた『音なし笛』を聞いた王獣が硬直して墜落しないように。
なのに、途中から『ハープの音』で王獣を操るようになり……「あれれ? 耳栓はどうした? 王獣は耳栓はしているんだよね? ハープの音だけ聞こえるのか?」と思った。
そしてラストシーン。
王獣に乗ったエリンは、狂った王獣を止める最後の手段として『音なし笛』を使う。
『音なし笛』を鳴らし、狂った王獣を硬直させ、墜落させるエリン。
が、王獣に乗っていたエリンも一緒に墜落してしまう。そして死んでしまう。
やっぱり、王獣に耳栓させていなかったのか? いつから耳栓なしで飛ばすようになった?
ま、『獣の奏者』は作者もエリンの少女時代で終わらせるつもりだったらしく、その時点では大人になったエリンのその後の話の構想はなかったと思われる。
なので『少女編』と『大人編』の出版期間もかなり離れている。
ワシも『少女編』を読んだ後、何年かしてから『大人編』を読んだので、『少女編』の細かい話など忘れていた。
なので『大人編』を読んだ当初、『王獣の耳栓』については、実はすっかり忘れていたのだ。『少女編』から読み返してみて、この点に気づいたくらい『王獣の耳栓』は些細なことだ。
ほかに『獣の奏者』について引っかかった点といえば――
「生き物の性を歪めてはいけない」とエリンは言う。
つまり、動物を家畜として飼い、食料とするのは仕方ないけど、子孫を残せない体にしてしまったことを「やってはいけないこと」とし、エリンは人間の身勝さに罪悪感を抱くのだ。
しかし現実、ペットの犬なり猫なりを避妊させていることについて、作者である上橋菜穂子氏はどう思うんだろうなあ、とふと思ってしまった。これも「性を歪めている」ことになるよな。エリンから見たら『悪』である。
ペット飼って、避妊させている人、『獣の奏者』を読んで、この点はどう思ったんだろう?
結局、悪だと分かっていても、避妊をさせてペットを飼いたい。
貧しくなることが嫌で戦争を始めてしまうのと、根っこは同じかも?
人間はエゴを捨てられない。キレイごとだけで生きていけない。
『獣の奏者』はそんなことも教えてくれる奥の深い物語である。
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原作無視・ドラマ化された『野ブタ。をプロデュース』
原作小説とかけ離れすぎた設定
原作を忠実に再現することなく、映像化されると主要キャラは美人とイケメンになってしまうことについて。
『守り人』のヒロイン・バルサもそうだったが……
「これは原作を無視した暴挙だ」と思ったドラマがある。
白岩玄の小説『野ブタ。をプロディース』がそれだ。
原作のほうのいじめられっこの野ブタは、太っていて冴えない容姿の男子生徒だった。スクールカーストでいえば最下位。
けど、テレビドラマのほうは、皆が憧れる世間でいうところの超Aランクの美しい容姿の堀北真希さんが、野ブタ役だという。
その配役を聞いただけでワシはドラマを見る気が失せた。
ちょっとおしゃれすれば超Aランクになるような人が『カースト最下位に位置する冴えない役』を演じてもなあ……あまりに嘘っぽいと思って、白けた。性も違うし。
なんか昔の少女漫画を思い出す。『冴えないメガネブスの女の子が実はメガネを外すと美人』ってやつ。
テレビドラマ(映像系エンタメ)って主役級は皆、美男美女、イケメン、かわいい子だらけ。そういった人たちで構築される架空世界に全く現実味を感じなくなり、ドラマもあまり見なくなった。
そうそう、昔、何かのドラマで『ブス役』として小林聡美が出ていたけど「ええ? 小林聡美クラスはブスなのか、ずいぶん厳しいな」と思ったっけ。
なので、この頃は映像エンタメとは距離ができてしまい、もっぱら文字だけの小説を楽しんでいる。
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